2021年に入るや否や、東京を中心とした1都3県、またその後を追うように近畿圏や福岡でも新型コロナウイルスの新規感染者数が著しく増加し、2020年4月に発出されて以来となる緊急事態宣言が再び発出されるなど、いきなり先行きの不透明感が漂う年始めとなった。緊急事態宣言が出されると人々は自宅にいる時間が増え、自宅の◯◯化傾向が一層強まるわけだが、人々の消費行動が変われば物流も当然変わってくる。今日はコロナによって物流がどう変わったのか、弊社が実際にコンサルティングやアカデミー運営の中で荷主・物流事業者様と接する中で感じている変化について解説を試みたい。

 

コロナによって変わったと感じることは大きく以下3つある。

 

 1. 非接触消費(通販・テイクアウト)の隆盛に伴う物量増加と自動化要求の高まり

 2. 非接触配達(置き配)が獲得した市民権

    3. 現場から離れられない物流部員の働き方

 

どれも物流業界に身を置く方なら実感を持って理解できる部分だとは思うがそれぞれ解説していく。

 

1.  非接触消費(通販・テイクアウト)の隆盛に伴う物量増加と自動化要求の高まり

まず1つ目の変化はやはり通販や飲食店のテイクアウトが著しく伸びていることに伴う変化だろう。一般消費財の通販物量が増加しているのは言うまでもないが、テイクアウト用のプラスチックの容器もかなり需要が高まってきており、思わぬところでも物量増加に伴うしわ寄せがきている。増えた物量をこれまでどおりの人員で対応するのもかなり厳しい状況なのにも関わらず、追い打ちをかけるように現場では密を避けるオペレーションを行わないといけないため、現場からするとダブルパンチの状況だ。ましてやコロナ感染者が発生してしまうと消毒対応や隔離措置を講じないといけないため、現場のマンパワーは更に減少し、結果お届けの遅延が発生してしまうという状況がちらほら発生している。この状況を打破すべく、各社省人化オペレーションの構築に心血を注いでいる。これまでも物流業界の慢性的な課題である労働人口の減少・ドライバー不足は顕著ではあったため、省人化オペレーションの構築=作業の自動化・ロボット化は進められてきたが、この1年その勢いが更に加速した印象だ。自動化・ロボット化の具体的な考え方やアプローチについては今後のコラムの中で詳しく触れていくつもりだが、各社試行錯誤を続けており、はっきりとした答えのない中で最善策を模索している。

 

2. 非接触配達(置き配)が獲得した市民権

2つ目の変化は非接触の配達、いわゆる置き配が世の中的に浸透し、消費者のアレルギーがなくなってきたことではないだろうか。置き配といえば古くから是非の議論は繰り返されてきているわけだが、配送会社各社が配送品質を落とさないため、届け先の荷物を確実に届けるために対面での受け取りが大前提とされてきた。こちらが不在で置き配でもいい、と言ってもドライバーから駄目です、と言われていたぐらいだ。その時代から再配達が社会問題化し、受取手段の多様化が進んだ。宅配ボックスが普及し、マンションや駅でもよく見かけるようになったし、コンビニや指定場所でも受け取れるようにもなった。それでもやはり自宅で受け取れるということの価値やニーズは大きく、再配達率は高止まりしていたわけだが、このコロナ禍でなるべく接触しないようにするという行動の中で置き配が再び注目されアマゾンやウーバーイーツにおいて置き配をデフォルト設定として推奨するようなUIになったことは記憶に新しい。外出自粛やリモートワークが推奨されたことも相まって再配達率は一時的には減少したが配送関係者に聞くと経済活動が再開されるに伴ってまた上昇してきているという。なかなか一朝一夕には解決しない課題だが、この置き配率をもっと高めていくためには消費者マインドだけでなく、住居の構造に工夫が必要であることは間違いない。平たく言うと、住居が置き配されることを前提に設計されていないということだ。弊社が運営しているアカデミーでも受講生に未来の物流を模索してもらいイラストに落とし込んでもらう講義があるのだが、そこでも建物が鍵を握るソリューションがいくつも出てくる。物流業界は建築・建設業界と交流をして物流課題の業界の垣根を超えて解決していく必要があるのではないかと強く感じている。

 

3. 現場から離れられない物流部員の働き方

変化が起きたのは何も物量と届け方だけではない。エッセンシャルワーカーとして、基本的にはリモートワークがしづらく現場を離れることができない物流部員の働き方にも変化が現れている。密を避けるため、チームを作り、チームごとに在宅勤務と現場勤務を交代でシフト勤務をする企業が明らかに増えてきており、定着してきている印象すら受ける。コロナ前は原則全員が現場に出勤し、職場には固定の自席があり、パソコンもデスクトップが当たり前だった物流現場において、ノートパソコンが貸与され、リモートワークで作業するための工夫を各社が行っているのが今の現状だ。現場作業の生産性向上を掲げながら、社員は決して生産的な働き方が言えなかった状態から働き方を見直し、リモートでできるところはリモートでやろう!という雰囲気が高まってきているのはとても良い傾向だと思う。一方で、現場の作業は体につけたセンサーで遠隔のロボットが同じ動きをする、なんて近未来的なソリューションが出てこない限りはまだまだ現場でしかできないわけで、そこをこれから如何に少人数で実現するかについては更なる工夫が必要な部分であると感じている。

 

以上の3つが大きくコロナ禍で物流現場に起きている動きであり、良くも悪くも物流現場が変わらざるを得ない状況になっているのは事実である。弊社としてもやはり鍵を握るのは省人化ソリューションの検討・導入であると考えているので、そこの支援をしっかりとできるようにこれからも積極的な情報収集とコンサルティングやアドバイザリーを通じたご支援でサポートさせていただきたいと考えている。今この機に上記で記載したような変化に見舞われていないのであれば、それは対応しなくても大きな影響がないとても恵まれた稀な現場か、極めて感度の鈍い現場のどちらかであるので、今一度自物流に携わっている皆様におかれては自社の物流運営状況を見直す時間をしっかりと取って頂きたいと思う。