フィラディス×CAPESの若手社員が奮闘した倉庫移転。会社の成長を支える物流のあり方
「日本に成熟したワイン文化を根付かせる」ことをミッションに掲げ、ワインに関連した多角的な事業を展開してきた株式会社フィラディス。今年で21年目を迎えたフィラディスですが、以前より事業の成長速度に物流が追いつかない状態が続いていました。そこで、昨年から倉庫移転のプロジェクトをCAPESと進行し、今秋、横浜市の本牧埠頭に位置する新拠点への移転が完了しました。
今回は、移転を担当した国内物流部フィラディス横浜DCセンター長の瀧澤隆宏さんと、同じく国内物流部で今回初めて外部コンサルとのやりとりや移転を経験した若手社員の平井健人さんにインタビューを実施。フィラディスの倉庫移転をメインでサポートしたCAPES赤池祐香を交えて、1ヵ年に及ぶ移転の軌跡、物流に対する熱い思いを語っていただきました。
会社の成長についていく倉庫をつくるべく新拠点へ移転
―フィラディスが倉庫移転をするに至った経緯を教えてください。
瀧澤:旧倉庫が手狭になっている状態が何年も続いていたのですが、倉庫を探す部分も含め、なかなか物流改善が進んでいない状況でした。私は4年前に入社したのですが、前職から物流に携わっていたので、入社後にいろいろと状況を整理して別のスペースを借りるなどなんとかやっていました。しかし、それももう限界になってきて。なかなか定温の物件自体がなかったのですが、そんなときちょうどこの倉庫が建つことになり、具体的に移転の話を進めていくことになりました。
―なぜそのような状態が続いていたのでしょうか?
瀧澤:毎年1.1倍くらい売り上げが上がっていたのですが、カジュアルな価格帯の展開に力を入れてきているので、売り上げよりも物量のアップ率のほうが高くなってしまっていたんです。だから、会社の成長についていく倉庫にしたいというのが今回の移転の意図でした。
そこで前職からご一緒させていただいていたCAPES代表の西尾さんに、「エラーなく移転を成功させたい」ということでコンサルを依頼しました。本来は移転のみで他の変化はあまり考えていなかったのですが、物が移動するのであれば保管方法などを変えるチャンスだと思い、オペレーションの部分も変更することにしました。
―その中で平井さんはどのような役割だったのでしょうか?
平井:私が主に現場で動いていました。移転はもちろん、コンサルなど外部の方と会話してプロジェクトを進めること自体、私にとって初めての経験でした。そもそも物流領域の仕事をすることも今回が初めてで、コスト計算もできず、正直、何をどう改善したらいいかわからないという状態だったんです。でも、一からやってみようということで、瀧澤に相談して物流を学びながら、移転をスムーズに進行するための細かいタスクを作ったり、どのタスクに人員が何人いるかをまとめたりしていきました。
瀧澤:フィラディスは急成長中の会社で、私が入社した当時もすでに物流が追いついておらず、物流を軌道に乗せることが自分の使命と位置づけ、なんとかやりくりしていた状態でした。私も決して若くないので、今後もっと会社が成長していったときに別の拠点構想も考えられるような人材を育てないといけません。なので、リーダーとして仕切れる力をつけてもらうべく平井をアサインしました。
―平井さんと同じく、CAPESの赤池も今回が初めてのコンサルタント業務でした。
赤池:私はワインの物流に携わるのは初めてだったので、ワイン特有の取り扱い方があるのか、各工程に課題はないか等のポイントをおさえながら進めていきました。移転っていろんなことを改善できるきっかけでもありますが、瀧澤さんがお話しくださったとおり旧倉庫を稼働させながら移転計画を進めなければいけないため、リソースも限られている状況でもあります。移転計画に支障をきたさない範囲でどこまでやり切れるか、どうやって旧倉庫を稼働させながら新倉庫にスムーズに移転するかというオペレーションを、西尾とタッグを組んで考えていきました。
限られたリソースで実現した検品の動線とオリジナルの保管方法
―具体的にはどのようにプロジェクトを進めていったのですか?
赤池:フィラディスさんは移転に関してマスタースケジュールと課題管理表の両輪を回しながらプロジェクトを動かしていたのですが、そのマスタースケジュールの進行に漏れがないか、課題の進捗に遅れがないかといったチェックなど、プロジェクトマネジメントのサポートを横断的に行うPMOとしてCAPESが入らせていただきました。
ご依頼内容としては移転がメインでありつつも、移転を機に検品方法や保管方法も変更したいというご希望があったので、それらも含めていかにスムーズに進めるかを考えていきました。瀧澤さんに物流の知見がありたくさんアイデアをお持ちだったので、フィラディスさんから出てきたご希望に対してアドバイスをしたり、ちょっとした不安や悩みをなんでも書いてもらうシートを作ったりして、小さい課題から一つ一つ解決していくためのサポートをしていきました。そのためにフィラディスさんが今何に対して困っているのか、また、何が助けになるかを考えながら、なるべくコミュニケーションを頻繁に取ることを意識して、オンラインの定例会議以外にもチャットで密に連絡を取っていました。あとはフィラディスさんと同じ目線で、解像度で考えるためには現場に足を運ぶことも大事にしていました。
―瀧澤さんはどのようなアイデアをお持ちだったのですか?
瀧澤:私は、「人を動かさないで物が動く」ということが物流の理想だと思っているんです。弊社のように小さな会社で予算も限られている中で、それをどう実現していくかを考えると、ある程度ポイントを絞って尚且つ効果が出るアイデアを出さないといけません。それがなんなのか考えていくと「検品」が一つのポイントになるんじゃないかと思いました。
―検品ですか?
瀧澤:はい。つまり、物が動くことで、人がいかに動かずに検品に集中できる環境をつくれるかがポイントだと思ったんです。旧倉庫は人の動線にかなり無駄が多く、スタッフが行ったり来たりして、たくさんの人とすれ違わないと業務ができない環境でした。コンベアを張り巡らせるという案もありますが、弊社の規模だとまだそこまでの効果も出ないだろうし、まずはできる限り人が動かないように動線をつくることを念頭に置いて新倉庫を構想していきました。
赤池:その点で言うと、ワインの保管方法の変更にもこだわられていたのかなと思います。旧倉庫ではテーブルにワインボトルを並べて置いていたため、保管効率に課題感を持たれていらっしゃいました。そこで、今回の移転を機にオリジナルのビンボックスをつくったことで、保管効率と作業効率を改善できたのは大きな変化だったんじゃないかと思います。
平井:そうですね。旧倉庫ではいちいち箱を開けて、ワインを取り出して、閉めて、と手順が多かったのですが、ビンボックスを作ってからは箱の開閉の作業がなくなりかなり手間が省けました。現場で働いている作業者の方々からも「楽になった」「早く作業できる」という声をいただいて。コストなど数字でわかる部分以外に、体感でわかる改善ができたことが嬉しいですし、現場作業が楽になったのが良かったなと思っています。
後回しになっていた「やらなきゃ」を整理
―CAPESに頼んで良かったと感じたことはありますか?
瀧澤:我々は移転だけをやっているわけじゃなくて、通常業務もしているので、移転業務がなかなか追いつかないことも多々ありました。なので、CAPESさんに細かくスケジュールや課題管理をチェックしていただけてとても助かりました。
CAPESさんがいなければ、抜け漏れがないか心配で、プロジェクト自体がおぼつかない状態になっていたんじゃないかと思います。赤池さんや西尾さんがPMOとして必ず側にいてくれるというだけで安心感がありました。また、今回現場の手順書のフォーマットを揃えたほうがいいとご指摘をいただいたことも大きかったです。
―これまでは手順書のフォーマットが揃っていなかったのですか?
平井:そうなんです。これまではスタッフが各々好きなように手順書を書いていて、文字色からフォント、注意点の書き方など、すべてがバラバラ。パートさん向けなのか管理者向けなのかなど対象者が誰かということすらわからない状態で、正直、手順書とは言えない体裁になっていました。移転をきっかけにそのフォーマットを揃えたことで、誰が見ても同じように理解できるものになったのはとても大きな変化でした。
瀧澤:フォーマットづくりは以前からやらなきゃいけないと思っていたのですが、ずっと後回しになっていたんです。「やらなきゃ」と思っているタスクの優先順位を整理してくださったことがとても助かりましたし、フォーマットを整えるだけじゃなく、運用の相談もさせていただけるので心強いです。
物流は日陰の部署じゃない。「物流をかっこよく」に賛同
―平井さんも赤池も、今回初めての業務を進めていったわけですが、一緒にプロジェクトを推進した率直な感想を教えてください。
平井:物流領域にがっつり入るのが初めてだった私に対して、CAPESさんは私が考えつかないような視点や考え方を与えてくれました。移転の実際の作業も、分解していくと「こんなに細かいタスクまであるのか!」と思うことばかりで、本当に一から移転の進め方やどういったコミュニケーションが必要なのかを学ばせていただきました。
赤池:私もフィラディスさんに育ててもらったという気持ちです。スキルとして学ばせていただいたこともありますし、瀧澤さんや平井さんが持っている「移転をきっかけに社内での物流部の見られ方をもっとポジティブに変えていきたい」という熱い思いに触れながら一緒にお仕事ができて良かったです。
瀧澤:未だに我々は社内から「倉庫」って呼ばれていて、会社全体に「物流部」という概念がないんです。これからは「倉庫」と呼ばれないように、利益を生む活動もしていきたいですし、CAPESさんがおっしゃっている「物流をかっこよく」という言葉にも賛同して、物流は日陰の部署じゃないんだぞっていうことを表現していきたいと思っています。
―最後に、フィラディスの今後の展望を教えてください。
瀧澤:プロフィットセンターとして預かり業務で利益を得ていきたいですし、他社の3PLも取れるんじゃないかと思っています。さまざまなワイン業者のノウハウを知ることで、他のワイン業者に対してのコンサル的なこともできるかもしれません。そうやってワインの物流にもっと面白いエッセンスを加えていって、「フィラディスの物流って面白い」と思ってもらえたらいいなと思っています。
また物流関連のプロジェクトを動かすことがあったらぜひCAPESさんにお願いしたいですし、私たちと実々の業務は違えど「物流に携わりたい」「物流部に入りたい」と思う人が増える環境をお互いつくっていけたらいいですね。同志のような気持ちで歩んでいきたいと思っています。
インタビュー・執筆・編集:飯嶋藍子(sou)
撮影:N A ï V E
株式会社フィラディス
2003年8月に設立したワインの専門商社。2007年よりクオリティーワイン(正規代理店ワイン)の販売を開始し、現在は180以上のワイナリーと正規代理店契約を結ぶ。2021年にはワインセラー「フォルスタージャパン」事業を買収。「日本に成熟したワイン文化を根付かせる」ことをビジョンとして掲げている。
公式サイト:https://firadis.co.jp/
オンラインストア:https://firadis.co.jp/store/
Instagram:@because.wine