物流人礼賛!CAPESオリジナルクラフトビール「LOGI BEER」に込めた思いと誕生秘話
暑い夏の労働のあと、何杯でも飲みたくなる――「物流人礼賛」をコンセプトに掲げるクラフトビール「LOGI BEER -MIKAN SAISON-(ロジビアー /ミカンセゾン)」、みなさんもうお試しいただいたでしょうか?
このクラフトビールは、CAPESが運営するブランド「MERRY LOGISTICS」から2024年5月24日に発売された新商品。“物流業界で働く人達の、仕事終わりを癒す一杯”、“物流業界で働く人達へ、「ありがとう」を言いたくなる一杯”を目指し、福岡県糸島のブルワリー・Camosi Brewingとのコラボレーションによって生まれました。
今回はレシピ開発を担当したブルワーの渡部淳一さんと、企画を担当したCAPESのブランドディレクターの澄田果林が、「LOGI BEER」に込めた思いや制作秘話について語ります。
キーワードは「大人のための清涼飲料水」。
LOGI BEERに込めた思い
―「物流×クラフトビール」ってなかなか結びつかないと思うのですが、なぜ物流の会社であるCAPESがクラフトビールをつくろうと思ったのでしょうか?
澄田:まず、物流業界で働いている方々を労いたかったんです。物流業界は省人化の動きが主流になってきているのですが、一方で、ラストワンマイルを担っている方や物流センターで働く方など、実際には人の手・肉体労働なしでは回りません。自動化・AI導入が推奨される今だからこそ、あえて現場で働いてくださっている人たち「物流人」を礼賛したい、労いたいという思いがありました。
じゃあどう彼らを労えるかと考えたときに、「肉体労働のあとの労いといえば、やっぱりビールでしょう!」と思って。さらに、クラフトビールって、今の流行として、物流業界以外の方が楽しめるとっつきやすさもある。だから、一般の方に物流について知っていただくきっかけにもなるんじゃないかと考えたんです。あと、渡部さんがもともと友人でクラフトビールの仕事をしていることを知っていたので、すぐに相談できたということも大きかったですね。
―具体的にはどのような相談をして、ビールづくりを進めていったのですか?
澄田:「物流をテーマにビールをつくりたい」という大きな軸はあったのですが、具体的なコンセプト、味、レシピ、どこでつくるのかということをすべて並行して話し合って進めていきました。
渡部:せっかくなので僕のお付き合いのあるところで、安定したクオリティでビールをつくれるブルワリーとご一緒したいなと思い、福岡県糸島のCamosi Brewingを紹介させていただきました。でもそれ以前に、澄田さんから、そもそもCAPESってどんな会社なのか、物流業界ってどんな課題があるのかということも教えてもらって。
澄田:CAPESとしては、物流業界で頑張っている人を称えることはもちろん、2024年問題など重たく難しい話題が取り上げられがちな物流業界のことを業界外の方々にももっと軽やかに楽しく知っていただく機会や、「物流業界って面白そう」と感じてもらえるきっかけを作りたいんです。そういう思いから、ブランドを立ち上げてものづくりをしています。
そういった会社としての意図を渡部さんに話したところ、それならより多くの人が飲みやすいスタイルがいいんじゃないかとご提案いただき、「仕事終わりに飲んでもらいたい」「大人のための清涼飲料水」という方向に話が進んでいきました。そこで、IPAや黒ビールのようなガツンとした重めのものではなく、すっきりした味わいのセゾンスタイルを採用することになったんです。
渡部:そもそもセゾンは16世紀ごろにベルギーで発祥したスタイルなのですが、当時、水よりもビールのほうが衛生面的に安全だということで農作業をする労働者たちが飲んでいたものなんです。つまり「労働者のためのビール」なので、今回のコンセプトとも結びつくなと思いました。さらに、Camosi Brewingさんもたまたまセゾンスタイルを得意とされていて。
仕事終わりに何杯でも飲みたいビールを目指したレシピ開発
―渡部さんは、物流業界の話や、物流の会社がビールをつくるということに関してどのような印象を受けましたか?
渡部:物流業界が人手不足であるということはニュースでもよく聞いていましたし、オートメーション化されつつも、結局最後は人が運ぶというアナログな部分もあって、漠然と大変そうだなっていうイメージがありました。僕自身、ネットでよく買い物をするので、再配達の手間なども普段から目の当たりにしていて。ただ、そういった話をビールの味として表現するのは難しいですから、なかなか新しいチャレンジでしたね。
―新しいチャレンジでありながら、どうやって味を考えていったのですか?
渡部:どんなビールのレシピをつくるときでも、いちばんに考えるのは「どんなシチュエーションで飲みたいか」「そのシチュエーションに合うのはどんなスタイルで、どんな味わいと香りか」ということ。澄田さんと話していくうちに「疲れを癒す」「労働後に飲む」という具体的なシチュエーションが見えてきたので、そこからレシピを組み立てていきました。
澄田:Camosi Brewingさんからもいろいろなアドバイスやご提案をいただきました。レシピにおいては、お知り合いの農家さんがつくっている糸島産品種のみかん「はるか」が使えるよというお話が上がってきて。みかんのセゾンと聞いたときに、絶対おいしい!と確信しました。
渡部:仕事終わりの癒しという意味では、カボスやライムなど、疲れを癒すクエン酸系の酸味を加えようと思っていたんです。でも、原材料がなかなか手に入らなくて。そんなときにみかんのお話をいただいたので、酸味というより、もっとジューシーな方向性に持っていって、塩で味を整えながらミネラルドリンクのような味わいを目指すレシピにアップデートしていきました。
―レシピを考案するうえでとくにこだわったポイントは?
渡部:ビールをつくるときって、ビールにあわせていろいろな種類の麦を使うんです。普通はあまり入れないのですが、今回は少しまろやかな舌触りを実現するタンパク質成分がありつつも、酸味が強くさっぱりした味わいになるライ麦を少し使いました。尖った味というより柔らかいニュアンスになるように酵母の選定にもこだわりました。
また、ホップもすごく重要でしたね。コラボレーションでつくるビールって、ホップのフルーティーな香りを全面に出した派手な風味のものが比較的多いんです。でも、今回は味わいに重きを置きたかったので、ホップ由来の味わいや香りは少し感じられる程度にしつつ、攻めるけど攻めすぎないバランスを慎重に考えていきました。
―風味より味わいを大切にしたかったのはなぜですか?
渡部:ホップの香りや苦味が強いビールって、1杯の満足感は高いのですが飲み続けていると疲れてきちゃうんですよね。物流業界で働く人を癒すための大人の清涼飲料水というコンセプトを考えると、1杯で終わるんじゃなくて、2杯も3杯も飲みたいと思ったときに飲み疲れせずにおいしさをキープして味わっていけるもののほうがいいなと思ったんです。
つまり、原材料一つひとつのキャラクターが突出しているものよりも、バランス良くまとまったビールのほうが、今回の目的やコンセプトにも合うなと。僕自身も何杯でも飲みたいと思えるビールが好きなので、そういうビールをつくりたかったという個人的な思いも詰まっています。
「森、道、市場」では即完売。1日で5缶飲んだ人も。
―「LOGI BEER」は5月24〜26日に開催されたフェス「森、道、市場2024」から発売開始となりましたが、お客さんの反応はいかがでしたか?
澄田:「森、道、市場2024」では、予想を超える好評で即完売してしまいました。爽快感があって何杯でも飲めるものになっていたので、1日で5缶飲んだお客さんもいらっしゃって。渡部さんの思惑通りに購買いただきました。あと、みかんの果実感と苦味のなさのおかげで、「ビールが苦手」と言っていた人たちが「これはおいしい」と飲んでくれたんです。飲んでもらえる層が想像よりもはるかに厚くて、とても嬉しかったですね。
―「森、道、市場2024」は、音楽好きやマルシェ好きが集まる、いわば物流業界とは少し距離のある人が多い現場だったと思いますが、物流の話はできましたか?
澄田:はい。まずクラフトビールという商材やラベルのイラストにすごく興味を持っていただけて。そのうえで物流の会社がつくったビールだということをお話しすると、ほとんどの方が「え、物流?」とCAPESの取り組みや、作った背景について話を聞いてくださいました。「LOGI BEER」が、思い描いていたとおり、物流を知っていただくきっかけのキーアイテムになったなと実感しました。「ラベルがかわいい」「味がおいしい」という単純なきっかけから物流に触れてもらえて、今回目指していた「物流を軽やかに楽しく魅せる」ということがまさに実現できたと思います。
渡部:クラフトビール業界ももっと飲み手を増やすことが課題なのですが、「LOGI BEER」はクラフトビールを普段から飲んでいる人だけでなく、新しい消費者に認知されて楽しんでもらえたことがすごく良かったと思います。クラフトビールも、一見なんのつながりもないフィールドから開拓されていく可能性がまだまだあるなと再認識できました。
LOGI BEERの次の一手。CAPESが大切にする商品づくりへの意識
―「LOGI BEER」の今後の展開は?
澄田:「LOGI BEER」は第2弾が決定しています。今回はCamosi Brewingさんが考案くださったレシピでつくっていて。コンセプトは変更せず、労働後の飲みやすさ・癒しいう観点で、同じくセゾンスタイルで、ホワイトセージを使ったハーバルセゾンになります。
渡部:ホワイトセージ、すごくいいですね。僕がもしまた物流業界とコラボするなら、次は逆に力強いビールをつくりたいです。「癒し」というよりも、「ガツガツ働いてるんだぜ」っていうのを表現するようなもの。赤や黒のガツンと苦いIPAみたいなものも面白いと思います。
澄田:じゃあそれを第3弾にしましょう(笑)。「今日は頑張ったぞ!」っていう日に飲みたいですよね。
―「LOGI BEER」をどんなふうに楽しんでもらいたいですか?
渡部:僕は物流業界の人間じゃありませんが、最初に打ち立てたコンセプトのとおり、まずは物流業界で働く人に「おつかれさまの1杯」として飲んでいただきたいですね。僕、この企画があってから物流のトラックとかが目に留まるようになって。僕と同じように、「あ、ここにLOGIって書いてあるな」くらいの感覚でいいから、みなさんがなんとなく「物流」を意識することにまずは働きかけていけたらいいなと思っています。
澄田:CAPESは、「物流に関わるすべての人が、胸を張って働ける社会を実現したいという」思いで活動しています。このビールも彼らを称えるためにつくったものなので、ぜひたくさんの物流業界の方々に飲んでほしいです。また、「森、道、市場2024」で出会った方々のように、物流のことを今まで考えたことのなかった人たちには、「LOGI BEER」をきっかけに普段接している荷物の配達員さんや、さらにはその前後にいる人たちに想像を巡らせて、感謝の気持ちを持っていただけたら嬉しいなと思っています。
今回、「LOGI BEER」をとおしていろんな方々とお話しする機会があり、一般の方にとっては物が運ばれる経路や過程ってなかなか想像しづらいということを痛感しました。なので、物流そのものの認知を広げるためにも、業界内外問わず、親しみやすい商品をつくっていきたいと改めて思いました。業界で働いている人たちの心に届き、一般の人たちにも楽しく伝わるような、物流のこれまでの文脈も新しい文化も大事にした取り組みをしていきたいです。
インタビュー・執筆・編集:飯嶋藍子(sou)
撮影:西あかり
渡部淳一(わたなべ じゅんいち)
2017年DevilCraft株式会社に入社。ブルワリー業務を中心に、店舗、イベント業務も兼任。2019年から醸造責任者として、原材料在庫、仕入れ、帳簿管理他、醸造スケジュール、レシピ作成など、醸造から出荷まで全ての工程を担う。2023年株式会社スペントグレインに入社。醸造設備の輸入販売、ビール醸造のコンサルティング業務、飲食店のビールサーバー施工など、ビールに関する事業を幅広く手掛ける。2024年8月よりアメリカのクラフトビールを輸入販売するCardinal Tradingに入社。ブルワーとしての経験を活かしてクラフトビールを世に広めようと画策中。
Instagram:@jun229
Camosi Brewing
〒819-1601 糸島市二丈深江2545-1
Instagram:@camosibrewing
HP:https://camosi.beer/pre/
SHINKNOWNSUKE
グラフィックデザイナー / アーティスト。2017年にLAで開催した個展をきっかけに、本格的に活動を開始。UPPERLAKE MOB、UND、SD FAMなど複数のユニットとしても活動中。
Instagram:@shinknownsuke